贈与税の非課税特例。これまでの改正内容と今後の動向とは?

(画像=beeboys/stock.adobe.com)

贈与税の非課税特例として、「教育資金の一括贈与」や「結婚・子育て資金の一括贈与」が設けられていますが、2019年そして2021年の税制改正により、内容が少しずつ変わっています。現状の制度についてどのような内容になっているのでしょうか。さらに、これらの特例は今後の廃止が予想されていることから、今後の見通しについても解説します。

教育資金の一括贈与の概要

教育資金の一括贈与にかかわる贈与税の非課税特例とは、正式には「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」といいます。内容については以下の通りです。

  1. 贈与者である父母もしくは祖父母などが、金融機関に受贈者である子どもや孫名義の口座の開設および届け出を行い、教育に関係する資金を一括して拠出した場合に、その資金に対して、受贈者である子どもや孫ごとに1,500万円までの贈与税が非課税となる
  2. 対象となる教育に関係する資金の範囲は、「学校などに支払う授業料や学用品費」などのほか、「学校以外に支払う費用(学習塾費用や習い事などの費用)」だが、「学校以外に支払う費用」については非課税枠が500万円まで
  3. 受贈者である子どもや孫は30歳未満であることが条件

また、教育資金口座にかかわる契約が終了するのは、子どもや孫が一定の理由に該当した時で、終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額の取り扱いについても細かく決められています。その詳細については以下のとおりです。

(教育資金口座にかかわる契約の終了)
契約の終了時期については、以下のいずれかに該当した時です。

  • 受贈者の年齢が30歳に達した時
  • 受贈者が死亡した時
  • 教育資金口座の残額が0円となり、かつ、契約を終了する旨の合意があった時

あわせて契約終了時に管理残額がある場合、契約終了の理由が「受贈者が30歳になった」ことであれば、契約終了時に贈与があったものとみなされ、贈与税の課税対象となります。一方契約終了の理由が受贈者の死亡によるものである場合は、受贈者の相続財産となるため、相続税の課税対象となります。
ただし、受贈者が30歳に達した時に管理残額があったとしても、「学校などに在学している」もしくは「教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している」場合は贈与税が課税されないことになっています。これらのケースに該当しなくなった場合は、以下のいずれか早い日が契約終了日となります。

  • その年の12月31日
  • 受贈者が40歳に達する日

その際に管理残高がある場合は契約終了時に贈与があったとみなされ、贈与税の課税対象となる点には注意が必要です。

さらに契約期間中に贈与者が死亡した場合で、その死亡の日において管理残額があった場合は相続税の課税対象となります。この詳細については以下のとおりです。

(契約期間中に贈与者が死亡した場合)
死亡した日における管理残額の相続税の課税関係

  • 2019年3月31日以前の拠出分:相続税の課税対象とはならない
  • 2019年4月1日~2021年3月31日の拠出分:贈与者の死亡前3年以内の拠出分について相続税の課税対象となる
  • 2021年4月1日以降の拠出分:相続税の課税対象となる

ただし、受贈者である子どもや孫が以下のいずれかに該当する場合は、相続税の課税対象とはならないことになっています。

  • 23歳未満
  • 学校などに在学している
  • 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している

これまでの改正点

2019年の税制改正により、23歳以上の子どもや孫に対する教育資金について、以下のような範囲に限定されることになりました。

  1. 学校などに支払われる費用
  2. 学校などに関連する費用(留学費用など)
  3. 学校以外に支払われる費用で、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用

また、それまではなかった受贈者の所得要件が設けられ、贈与があった年の前年の合計所得金額が1,000万円以下であることが求められています。

そして、2021年の改正では、契約期間中に贈与者が死亡した場合における2021年4月1日以降の拠出分について、受贈者が贈与者からみて孫もしくはひ孫などである場合、その相続税額の2割加算が適用されることになりました。

さらに制度全体の適用期間が延長され、2023年3月31日までの贈与が対象となっています。

結婚・子育て資金の一括贈与の概要

結婚・子育て資金の一括贈与の概要については、以下のとおりです。

  1. 贈与者である父母もしくは祖父母などが、金融機関に受贈者である子どもや孫を名義とした口座の開設および届け出を行い、結婚および子育て資金を一括して拠出した場合、その資金について、子どもや孫ごとに1,000万円までの贈与税が非課税となる
  2. 不妊治療や分娩費用、子どもの医療費など、「出産および育児に要する費用」や、挙式費用や敷金ほか新居費用など、「結婚にあたって必要な費用」が非課税の対象だが、「結婚にあたって必要な費用」についての非課税枠は300万円まで
  3. 受贈者は20歳(2022年4月1日以降は18歳)以上、50歳未満の子どもや孫であること

さらに「契約の終了」および「契約期間中の贈与者の死亡」に関する取り扱いは以下のとおりです。

契約については、以下のいずれかの事由に該当した時に終了します。

  • 受贈者が50歳に達した時
  • 受贈者が死亡した時
  • 資金口座の残高が0円になり、かつ、契約終了についての合意があった時

また、契約終了時に管理残額がある場合、終了の理由が「受贈者が50歳になったこと」であれば、契約終了時に贈与があったとみなされ、贈与税の課税対象となります。契約終了の理由が受贈者の死亡だった場合は、受贈者の相続財産となり、相続税の課税対象となります。

そして、契約期間中に贈与者が死亡した場合、その死亡の日における管理残額については相続税の課税対象となります。

これまでの改正点

この結婚・子育て資金の非課税特例についても、これまでにさまざまな改正が行われています。

まず2019年の税制改正により、受贈者の所得要件が設けられ、贈与があった年の前年の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要となっています。

そして、2021年の改正により、契約期間中に贈与者が死亡した際の管理残額については、2021年4月1日以降の拠出分について、受贈者が贈与者からみて孫やひ孫にあたる場合は相続税の2割加算となるほか、2023年3月31日までの贈与についても制度の適用期間が延長されるようになりました。

それぞれの非課税措置の比較

ここまで説明した内容について、分かりやすく表にしましたので、参考にしてください。

教育資金の一括贈与 結婚・子育て資金の一括贈与
適用期間 2013年4月1日~2023年3月31日 2015年4月1日~2023年3月31日
非課税限度額 受贈者1人につき1,500万円
(ただし、学校以外に利用する場合は500万円)
受贈者1人につき1,000万円
(ただし、結婚に関する資金の場合は300万円)
贈与者の要件 父母もしくは祖父母など(受贈者の直系尊属)
受贈者の年齢要件 子ども・孫など(30歳未満) 子ども孫など(20歳以上50歳未満。ただし2022年4月1日以降は18歳以上)
受贈者の所得要件 前年の合計所得金額が1,000万円以下であること
(ただし、2019年4月1日以降の贈与の場合)

制度の利用状況および今後の流れ

内閣府が発表した資料によると、2019年の教育資金の一括贈与信託の新規契約数は、制度導入当初の約6万7,000件から減少し、約9,000件となっています。さらに結婚・子育て資金の贈与信託の契約数についても、制度導入時の約5,000件から約200件にまで激減しています。このような現状を鑑み、2021年の税制改正において、これらの特例については「2023年3月31日までに制度の廃止も含めて検討する」旨が発表されています。贈与税および相続税については、今後の改正において大きな変化が予想されるため、贈与税の相続時精算課税制度や暦年課税制度も合わせて、どのような動きになるかをチェックしておく必要がありそうです。

【オススメ記事】
会社員はお金持ちになれない?生涯賃金と資産額
老後の生活費の実態は?自分と日本社会の現実を見据えよう
不動産投資に関連する相続税・贈与税対策3点
日本人が苦手な借金。良い借金、悪い借金の違いとは?
お金持ちが実践しているお金に働いてもらうという発想