私たちは年金をいくらもらえる?将来の給付額と不足額をシミュレーション

(画像=norman01/stock.adobe.com)

年金だけでは老後資金が足りないことは分かっていても「実際にいくら不足するのか」をしっかりと把握できている人は少ないのではないでしょうか。ここでは、まず将来の年金給付額を確認できる方法を提示したうえで、「何歳までを想定して老後資金を準備すればよいか」を考えていきます。一般的な年金と仮に3,000万円の金融資産があっても老後資金がまったく足りない“厳しい現実”が見えてきます。

そもそも私たちはどのぐらいの年金がもらえるのか?

「年金だけでは老後資金が足りない」とあちこちで言われるため、老後に不安を感じている人は多いのではないでしょうか。そもそも私たちは年金をいくらもらえるのでしょうか。年金で足りない老後資金の金額が明らかにならないと将来の的確な備えもできません。将来の年金額を確認するには、定期的に送られてくる「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」が役に立ちます。

しかし「内容を覚えていない」「アクセスキーを紛失してしまった」という人も多いかもしれません。そんな人でもネット上の年金シミュレーターを活用すれば今すぐ手軽に年金給付額を確認することができます。

金融機関の年金シミュレーションで年金の給付額を計算

使い勝手がよく信頼性のある年金シミュレーターの一つとして三井住友銀行が提供するものがあります。基本情報の登録などの手間もなく簡単な質問に答えるだけで一人ひとりの将来の年金給付額を把握することが可能です。試しにこのシミュレーションを使い独身男性と共働き夫婦の将来の年金給付額を算出してみましょう。

・シミュレーション1.独身者(現在35歳・年収600万円)の年金給付額と老後キャッシュフロー
現在、独身のサラリーマンが未婚のままリタイヤした場合、毎月の年金給付額をシミュレーションすると以下の通りです。

65歳からもらえる毎月の年金額
18万2,000円
老齢厚生年金老齢基礎年金
11万8,000円6万4,000円

年金給付額だけを見ても老後資金を賄えるのかまでは判断できません。シミュレーションでは、65歳時点で3,000万円の金融資産を保有していた場合の「老後のキャッシュフロー」も示されています。3,000万円余力があって毎月約18万円の年金をもらえるのであれば余裕のある老後が送れるように感じるかもしれませんが、結果はそうではありませんでした。

引用:三井住友銀行「年金試算シミュレーション」

上記のグラフから3,000万円の金融資産がすさまじい勢いで減少していく様子が分かります。年金の不足額は毎月9万8,000円、年間約117万6,000円も不足する計算です。金融資産の推移を見ていくと70代半ばには2,000万円を切り80代半ばを過ぎると1,000万円を切ります。90代を迎えるころには金融資産はついに0円です。

近年は「人生100年時代」「長生きリスク」などと言われますが、グラフで視覚的すると長生きリスクを実感せずにはいられません。

・シミュレーション2.共働き世帯(現在夫40歳・妻35歳、年収1,000万円世帯)の年金給付額と老後キャッシュフロー
今度は、夫(700万円)と妻(300万円)合わせて年収1,000万円世帯の年金額を見てみましょう。

65歳からもらえる毎月の年金額
30万2,000円
夫の年金妻の年金
18万2,000円12万円

夫が65歳時点で夫婦合わせて3,000万円の金融資産を保有していた場合の「老後のキャッシュフロー」は以下の通りです。

夫婦の年金の不足額は毎月約4万8,000円、年金が2人分給付されるため、独身者に比べて金融資産の減り具合はやや緩やかです。しかし70代後半には当初の半分近い1,500万円前後になるため、心細い状況には変わりありません。また上記のシミュレーションでは、生活費だけで計算していることも気になるところです。

例えば「大病で高額の医療費がかかった」「老人ホームへ入居した」など大きな出費が発生すると金融資産が激減する可能性も否めません。老後資金を実際にシミュレーションしてみると、仮に金融資産が3,000万円あったとしても生活水準を下げなければ老後のキャッシュフローはかなり厳しいことが分かります。

そもそも何歳を目安に老後資金を準備すればいいのか?

金融資産3,000万円で老後資金が足りないのであれば一体いくらあれば足りるのでしょうか。このテーマを解説する前に「何歳までの老後資金を用意すればいいのか」について確認しておきます。なぜなら目安となる年齢が分からなければ必要な老後資金を計算することができないからです。厚生労働省が公表している「令和元年簡易生命表の概況」によると2019年の平均寿命は、女性が87.45年、男性は81.41年となっています。

私たちが老後を迎えるころには、以下の表のように平均寿命はさらに伸びる可能性が高いでしょう。

現在の平均寿命と将来の平均寿命予測

年度女性男性
2019年(確定値)87.45年81.41年
2040年(予測)89.63年83.27年
2065年(予測)91.35年84.95年

※参照:2040年、2065年の平均寿命 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)
※2040年、2065年の平均寿命は死亡中位

ただし「平均寿命までの老後資金を準備すれば安心」というわけではありません。平均寿命はあくまでも平均のため、これを上回って長生きする人も多数います。そう考えると平均寿命プラス5~10歳あたりを目安に老後資金を準備するのが無難かもしれません。仮に2065年の平均寿命が女性91歳・男性85歳とした場合、プラス10年では女性101歳、男性95歳になります。

老後資金を5,000万円準備すれば100歳超でも余力

前項のシミュレーションで3,000万円の金融資産と一般的な年金だけでは、年収600万円の独身者だと90歳前後で老後資金が枯渇となりました。世帯年収1,000万円の夫婦では、90代を迎えるころに老後資金が1,000万円を切る不安な状況です。平均寿命プラス5~10年でも余力を保つには、どれくらいの老後資金を用意すればよいでしょうか。

・年収600万円の独身者の場合
先述したシミュレーションと同条件で65歳時点の保有金融資産を3,000万円から5,000万円に増やすと90代半ばで1,500万円前後、100歳時点で1,000万円前後の余力が生まれます(以下のグラフ参照)。

同様に世帯年収1,000万円の夫婦も保有金融資産を3,000万円から5,000万円に増やすと妻が100歳を迎えるころでも2,000万円の近くの余力が生まれます。将来必要な老後資金は何歳まで生きるかで大きく変わりますが、5,000万円程度あればシミュレーション上では安心と言えるでしょう。

年金給付をできるだけ先延ばしする年金改革法が成立

シミュレーションはあくまでも「現在の年金制度を前提に計算したもの」です。日本は人口減少社会が本格化するなか、年金制度の変革が急務となっています。そのため私たちの将来の年金給付額は大きく目減りする可能性も視野に入れておきましょう。その動きの一つとなるのが、2020年5月末に成立した「年金改革法」です。

この時期は、コロナ禍で世の中が混乱していたため、年金改革法はあまりメディアでクローズアップされなかった感もあります。しかし今後の年金制度の方向性を示す非常に重要な内容です。年金改革法には繰り下げ受給年齢の上限引き上げ(現在の70~75歳)、私的年金のiDeCoや企業型確定拠出年金の受給開始年齢の引き上げなどが盛り込まれています。

これらが示すのは「年金給付をできるだけ先延ばしにしたい」という国の事情でしょう。日本の財政状況を踏まえると老後への備えはいくらしても、しすぎることはないと言えます。また将来日本でインフレが進んだ場合に、円(給付される年金)の価値が下がるリスクも警戒すべきでしょう。そう考えると「5,000万円の金融資産を準備しても足りるのか?」という疑いすら出てきます。

逆風の日本に生きる私たちにムダな消費をしている暇はありません。貯蓄や資産運用を確実に進めて老後資金の準備を今すぐに始めましょう。

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