今こそ知っておきたい、円安のメリット・デメリットと投資への影響

(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

円安が日本経済に大きな影響を与えています。とくに深刻なのが輸入物価の高騰によるコストプッシュインフレです。一方で円安のメリットもあるといいます。円安になると私たちの暮らしや企業業績にどのようなメリット・デメリットがあるのか、投資への影響も交えて解説します。

2022年に円安が急激に進んだ背景

2022年に急激な円安が進んだ最大の要因は米国の金融引き締め(利上げ)です。欧米各国は日本以上にインフレが進んでおり、金融引き締めを急いでいます。これに対し日本銀行は金融緩和を継続すると黒田総裁が明言していることから、日米の金利差拡大により、金利差を狙ったドル買いが続いている状況です。

JETRO(日本貿易振興機構)の「ビジネス短信」によれば、FRB(米国連邦準備制度理事会)は2022年末までに政策金利(フェデラル・ファンド金利)を3.4%まで引き上げると予測しており、2022年6月15日時点の政策金利誘導目標1.5~1.75%に比べて約2倍の水準まで上がる可能性を示唆しています。

そうなると日本が利上げしない限り、日米の金利差はますます拡大することになり、当分の間円高に向きが変わる可能性は低いと考えるのが妥当でしょう。

円安になるとどうなる?

円安になると経済にどのような影響が出るのでしょうか。円安とは、円が他の国の通貨に対して、相対的に価値が下がっている状態をいいます。

例えば、円安が進み1ドル115円のドル/円相場が135円になった場合、1万ドルの自家用車を輸入するのに以前は115万円出せば輸入できたものが、135万円出さなくては輸入できなくなります。つまり円の価値が下がったことになるため、輸入業者の収益はマイナスになるのです。

上記のように円安になると輸入物価が高騰しますが、とくに物価に影響を及ぼすのが原油をはじめとするエネルギー価格です。日本はエネルギー原料を海外からの輸入に頼っているため、原油価格の上昇に円安が加わり、石油を原料とする製品の価格を押し上げています。2022年に起きたインフレ(物価高)も円安が大きく影響しているのは間違いないでしょう。

さらに、円安になると外国人投資家が日本の資産を買いやすくなるので、日本の不動産がどんどん外資に保有されるという事態を招いています。CBREが実施した「投資家意識調査2022」によると、2022年に日本の不動産取得額を増やすと答えた外国人投資家は74%に及びます。ホテルなど日本の不動産が外国人投資家に次々に買収されている現状は、日本の国力が低下した象徴と考えることもできます。

円安のメリット

円安の悪影響が顕著に表れていますが、円安には以下のようなメリットもあります。

輸出関連企業の業績を押し上げる

円安は輸出が増えるので輸出関連企業の業績を押し上げます。また、輸出が増えることによって日本の貿易収支が黒字になるメリットがあります。

外国人観光旅行客が増加する

次に円安のメリットとして挙げられるのが、外国人観光旅行客の増加です。外国人から見れば、円安によって同じ自国通貨の量でより多くの買い物や観光、飲食ができるので、観光業界、小売業界、飲食業界の売り上げ増加につながることは間違いありません。

外貨建て資産の為替差益が増える

もう1点、外国通貨建ての資産を持っている人には為替差益が生じます。例えば1株2ドル配当の米国株を保有している場合、受取配当額は1ドル115円のときは230円ですが、135円の円安になると270円(税引前)に増えます。1万株保有の投資家なら40万円の為替差益を受けることができる計算です。

円安のデメリット

半面、円安には以下のようなデメリットがあります。円安は相対的に日本の国力が低下するのが大きな
問題です。

輸入物価が高騰する

円安の最大のデメリットは前述したように輸入物価の高騰です。日本はエネルギーや食品原材料の多くを輸入に頼っているため、円安が物価全般に波及することになります。国民の生活はひっ迫し、上手く価格転嫁できない企業や商店が淘汰される可能性があります。

日本の資産を外国人に買われやすくなる

円安になると日本から見て海外の資産が買いづらくなり、逆に海外投資家などが日本の資産を買いやすくなります。そのため、株式投資ではますます外国人投資家の株主比率が高くなり、アクティビスト(物言う株主)の発言力が高まるという状況が考えられます。

海外旅行で使えるお金が減る

個人レベルでは、海外旅行へ行く際に現地で使えるお金の金額が少なくなるデメリットがあります。外国人観光旅行客が日本で買い物できる金額が増えるのと逆の関係となります。

円安が投資に与える影響

円安は投資家の投資判断にも影響を与えます。円安ドル高が長期的に続く場合、FX(外国為替証拠金取引)や米国株を中心に投資している人には追い風になります。米国の金融引き締め終了がまだ先と考えれば、ドル/円相場では買い方有利の展開がしばらく続くと予想できます。米国株投資ではドル高により配当金の手取り額が増えるので、配当を目的としたインカムゲイン投資には有利となります。

日本株投資では円安がメリットになる企業の株価上昇が見込め、デメリットになる企業の株価はマイナスの影響を受ける可能性が高くなります。

<円安がメリットになる株>

・輸出関連株
自動車、電機などの輸出関連株は円安になるほど為替差益が増えます。例えば、トヨタ自動車は1円円安になると450億円程度営業利益を押し上げるという試算があります。

・海運株
海運会社はドル建てで支払いを受ける会社が多いので、円安になると手取り収入が増えるメリットがあります。輸出が増えて貿易が活発になれば運賃の上昇も期待できます。

<円安がデメリットになる株>

・電力株
エネルギーの原料を輸入に頼る日本では、円安が電力会社の収益を悪化させます。円安によるコスト高に加えて、電力ひっ迫を緩和するために火力発電所の再稼働なども必要になり、電力会社にとっては逆風となります。

・食品株
小麦や油脂など輸入原材料価格の高騰に加え、原油高によって包装資材も値上がりしており、コスト高で利幅が縮小します。2022年1~4月に4,081品目で小売価格を値上げして価格転嫁を進めていますが、消費者の買い控えも考えられ、どこまで利益を確保できるか見通せない状況です。

円安の影響を受けない投資先はあるのか?

FXや米国株式など、円安ドル高によって利益を得られる投資先はありますが、何らかの政策転換があって円高ドル安に相場の流れが変わった場合は、逆に損失を被るリスクがあります。そのため、ポートフォリオのベースには為替の影響を受けにくい資産を組み入れることが大事です。

為替の動向に影響を受けにくい投資先としては不動産が挙げられます。不動産経営は国内物件である限り為替の影響は少ないので、安定した家賃収入が見込めます。首都圏のマンション賃料は、新型コロナウィルスの影響も受けなかったという実績があります。

東京カンテイの「市況レポート」によると、コロナ前の2020年2月の首都圏分譲マンション賃料が2,978円/㎡だったのに対し、コロナ拡大直後の2020年4月は3,053円/㎡に上昇し、1年後の2021年4月に3,269円/㎡、2年後の2022年4月に3,907円/㎡と右肩上がりで上昇を続けています。

ただし、不動産市況がすべて上がっているわけではなく、ビルディンググループの調査による東京オフィス推定成約賃料は2020年2月に1坪2万3,190円だった賃料が、2022年6月現在でも2万1,953円とコロナ前の水準を回復できていない状況です。やはり事業用不動産のほうが景気の影響を受けやすいようです。不動産に投資するなら居住用不動産に絞ったほうがリスクは少ないでしょう。

米国の金融引き締め路線が転換するまでは当面円安が続くと考える必要があります。円安のメリット・デメリットをしっかり把握して、よりリスクの少ない投資先を選択することが求められます。

※本記事は2022年7月12日現在の情報を基に構成しています。ドル/円のレートや賃料は一例であり、今後変化する可能性があります。参考程度にお考えください。

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