医療費控除とセルフメディケーション税制の3つの違いを解説

(画像=sharaku1216/stock.adobe.com)

支払った医療費を確定申告することで受けられる節税制度には、「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」があります。2つの制度は対象となる医療費、控除額の計算方法、確定申告時に提出する書類などが異なります。

医療費を一定額支払っている方は2つの制度を理解し、自身が利用する場合、どちらの制度の節税効果が高いのか考えることが重要です。本記事では医療費控除とセルフメディケーション税制の違いについて解説します。

医療費控除とは

医療費控除はその年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超える場合に控除を受けられる制度です。具体的な基準は10万円であり、保険金などで補填される金額は含みません。また、自身の医療費だけでなく生計を共にする配偶者を含む親族のために支払った医療費も対象です。

また、医療費控除で受けられる控除の種類は所得控除です。税金の控除には所得控除と税額控除がありますが、所得控除は税額を計算する前の所得から控除額を差し引き、再度、所得税と住民税を計算し直す仕組みになります。一方で、税額控除は計算した税額から控除額を直接差し引く仕組みです。

税額控除が適応される節税制度には住宅ローン控除や、ふるさと納税があります。税金の控除の仕組みに関してはセルフメディケーション税制も同様に所得控除となるため違いはありません。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制は2017年から新設された医療費控除の特例とも呼ばれる制度です。12,000円以上の対象となる医薬品を購入した場合に控除が受けられます。医療費控除と同様に自身と生計を同一にする者のために対象となる医療費を支払った場合にも控除を受けられる仕組みです。

また、セルフメディケーション税制と医療費控除は年末調整では受けられません。必要書類を揃えて確定申告する必要があります。特に医療費控除を受ける以外に確定申告の義務がない方は気をつけましょう。

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であるため、控除の仕組みや、確定申告の義務などの共通点も存在します。

医療費控除とセルフメディケーション税制の違い

医療費控除とセルフメディケーション税制の違いは3つあります。

  • 対象となる医療費
  • 控除額の計算方法
  • 確定申告に必要な書類

それぞれ詳しく解説します。

対象となる医療費

医療費控除において対象となる医療費はさまざまありますが、具体的には下記のような費用になります。

  1. 医師による診療費や治療費
  2. 治療または療養に必要な医薬品の購入
  3. 診療を受けるための通院費
  4. 治療のためのマッサージの費用
  5. 治療のために必要な義足や松葉づえなどの医療器具

上記はあくまで一例になりますが、医療費控除の対象の基準は治療のために必要であることと、一般的に支出される水準を超えないかが重要になります。例えば、通院にタクシーを利用した場合は一般的に支出される通院費の基準を超えるため対象にならず、医薬品を購入する場合であっても目的が病気の予防であれば、医療費控除の対象になりません。

一方で、セルフメディケーション税制で対象となる医療費はスイッチOTC医薬品の購入費であり、こちらは対象となる医薬品が厚生労働省で明確に定められています。対象商品であれば、医薬品を購入する目的が治療でなくても控除の対象になります。

セルフメディケーション税制は個人の健康維持や、疾病予防を目的とした制度であるため、医療費控除のように必ずしも治療を目的とする必要はありません。対象となる医療費が必ずしも一致しないのが2つの制度の大きな違いになります。

控除額の計算方法

医療費控除とセルフメディケーション税制の控除額の計算方法は異なります。まず、医療費控除の計算方法は下記の通りです。

  • 支払った医療費-保険などで補填される金額-10万円
  • その年の総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%

基本的な計算方法は支払った医療費から保険などで補填される金額が差し引かれるので、実質的な負担額から10万円を差し引いた額が控除額です。ただし、総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%で計算します。給与所得控除後の金額が180万円であれば控除額は9万円です。また、控除限度額は200万円になります。

セルフメディケーション税制の控除額は医薬品の購入金額から12,000円を差し引いた額です。控除限度額は88,000円であるため、10万円までの医薬品の購入金額を控除できることになります。

確定申告に必要な書類

それぞれの制度を利用するなら確定申告が必須になりますが、必要書類が異なります。医療費控除では、2017年以前まで領収書をすべて確定申告書に添付する必要がありましたが、現在では医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付する形で問題ありません。

ただし、明細書の作成に利用した領収書は5年以内であれば提出を求められる可能性があるので保管するようにしてください。

セルフメディケーション税制では、OTC医薬品を購入した明細書に加えて、健康診断や予防接種などの健康に関する一定の取り組みを行ったことを証明する書類の提出が必要になります。

具体的にはインフルエンザなどの予防接種の領収書や、定期健康診断の結果通知書などの書類が対象です。2つの制度に必要な書類を理解し、どちらの制度を利用する場合でも問題がないように領収書や、健康診断の結果通知書は保管するようにしましょう。

医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できない

医療費控除とセルフメディケーション税制には対象となる医療費や控除額の計算方法にも違いがありましたが、2つの制度を併用することはできません。

2つの制度は選択適用であるため、医療費控除を受ける方はセルフメディケーション税制を受けることはできなくなり、逆もまた不可能になります。

つまり、2つの制度のうち自身にとって節税効果の高い制度を選択する必要があるということです。どちらのほうが税制的に有利かは支払った医療費に依存するため、実際に計算して控除額を調べる必要があります。

医療費控除とセルフメディケーション税制のシミュレーション

それぞれの制度の控除額の計算を基に実際に例を挙げてシミュレーションしていきましょう。その年の課税所得金額が200万円以上の方が制度を利用する場合の医療費控除とセルフメディケーション税制の控除額について考えます。

医療費控除の計算

  • 保険の補てん金額を差し引いた医療費控除の対象額:14万円
  • 14万円-10万円=4万円

セルフメディケーション税制の計算

  • セルフメディケーション税制の対象額:5万円
  • 5万円-12,000円=3万8,000円

よって、このケースでは医療費控除を利用するほうが所得控除額は2,000円上回ります。しかし、医療費控除の対象額が13万円である場合は3万円が控除額になるので、セルフメディケーション税制のほうが8,000円上回るので逆転します。

実際に計算すると控除額の差が少ないケースも十分に考えられるので、必ず計算をしてから制度を選択して利用するようにしましょう。

自身の医療費を把握し適切な制度を利用する

医療費控除とセルフメディケーション制度は併用できないので、自身の医療費を把握して適切な制度を利用するのが税制的に有利です。

また、医療費を把握するためには明細を保管する必要があります。間違っても医療費に関する明細書は捨てず、税務署から提出が要求される可能性がある5年間分は保管するようにしましょう。

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