家族信託とは? 3つのメリット・デメリットを解説

(画像=JakubKrechowicz/stock.adobe.com)

家族信託は財産管理方法のひとつです。正式名称は民事信託ですが、家族に任せるケースが一般的であるため家族信託と呼ばれます。家族信託の手続きをすることで、自分が認知症になった場合でも子供に財産管理を任せられます。

認知症の有病率は80代後半で男性が約35%、女性が約44%であるため、高齢の方は備えるべきリスクです。また、家族信託は遺言の機能を備えているので相続対策になります。本記事では家族信託の仕組みとメリット・デメリットを解説します。

家族信託とは

家族信託(民事信託)とは自身で財産の管理ができない高齢者に代わって、財産を管理する権利のみを家族などの信頼できる人に託す制度です。信託契約に基づいて、財産の管理・活用・承継が可能になります。

例えば、自身が保有する不動産を子供が管理し、運用することが可能になるのが財産の管理です。承継に関しては相続が発生した場合に相続の順位を決めることができます。家族信託は財産の管理を子供に任せるだけでなく、遺言の機能も備えているといえます。

家族信託の仕組み

家族信託は、委託者、受託者、受益者の3者の関係で成り立っています。委託者は財産を保有している人であり管理を依頼します。受託者は依頼を受けて実際に財産の管理を行う人のことです。受益者は財産から生じた利益を受け取る人のことを指します。

自身の認知症対策で家族信託を利用する場合、委託者は親、受託者は子になりますが、受益者は自由に設定可能です。基本的に財産管理を目的に家族信託を契約する場合は、受益者は財産の持ち主である委託者に設定するのが一般的です。

家族信託の手続きの方法

家族信託の手続きの方法の中でも、信託契約による手続きを紹介します。

  1. 契約書の作成
  2. 財産の名義を移す
  3. 家族信託用の専用口座の開設

家族間で家族信託の目的について話し合い、信託契約書を作成します。契約書には信託の対象となる財産や委託者、受託者、受益者となる契約の当事者に関する情報と、相続に関する取り決めに関する情報の明記が必要です。公証役場で公正証書にすることも重要です。

次に、財産の名義を親から子に移します。不動産などの資産に関しては財産を移すために法務局への登記申請が必要です。

信託財産は分別管理が原則であるため、子供に自分の財産を管理するための専用口座を開設してもらう必要があります。手続きに不安のある方は司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは3つあります。

  • 任意後見制度よりも財産管理がしやすい
  • 遺言状の代わりになる
  • 孫に対する資金の贈与がしやすくなる

それぞれ詳しく解説します。

任意後見制度よりも財産管理がしやすい

家族信託以外で家族の財産管理ができる制度には、任意後見制度があります。財産を管理する際、家庭裁判所が選定する任意後見監督人への報告義務があるため、財産管理に制限が発生します。

合理的な理由があり不動産を売却する場合であっても、任意後見監督人に理由を説明し、承認が得られなければ売却できません。任意後見制度は財産の管理はできますが、不動産などの財産を積極的に活用することが難しくなります。

家族信託には監督人が存在しないため、分別管理の原則の上で資産の活用を自由に行うことができます。任意後見制度にある制限がないので、委託者のためになる財産管理が柔軟に行えます。

遺言状の代わりになる

家族信託では相続の継承に関する取り決めも可能であり、委託者が受益者を設定することで遺言状の代わりになります。また、委託者の死亡後の財産管理も可能です。

財産を配偶者に遺す場合、配偶者が認知症になり財産管理が必要になるケースが発生する可能性があります。委託者はこのような状況に備えて、配偶者の財産を管理する受託者を指定できるため、相続を円滑に行う際、有効な手段となります。

孫に対する資金の贈与がしやすくなる

教育資金の非課税の特例制度において、受贈者が30歳未満であれば、1,500万円までの贈与に税金がかかりません。ただし、1,500万円以上贈与する場合など、一括で教育資金を贈与しない理由があれば、家族信託を利用して預金の一部を信託することで、なくなった後に教育資金を渡すことも可能です。

また委託者は、孫が大学を卒業するまでに財産管理ができない状態に陥った場合でも、入学などのタイミングに合わせて教育資金を贈与できます。家族信託の遺言の範囲は広いため、さまざまな方法で遺族に資産を残せます。

家族信託のデメリット

家族信託のデメリットは3つあります。

  • 財産以外の管理はできない
  • 損益通算ができない
  • 実務経験のある専門家が少ない

財産以外の管理はできない

家族信託でできるのは財産管理のみです。法律行為を代わっておこなうことや、法律行為の取り消しできません。財産以外で管理する場合は、任意後見制度を利用することが必要になります。

任意後見制度は認知症などで判断能力が十分でない方に対して、さまざまな保護と支援を行う制度です。財産管理に加えて、介護や医療を受けるための契約を本人の代わりに行えるため、判断能力がない状態で勝手に結んだ契約も破棄できます。

ただし、家族信託と任意後見制度を併用することが可能です。それぞれ契約することで、任意後見制度では「柔軟な財産管理ができない」というデメリットが解消できます。2つの制度を併用すれば、自身の判断能力が失われても子供に財産管理を含めた法律行為を任せられます。

損益通算ができない

損益通算とは所得から損失を差し引いた額を控除する節税制度のことです。仮に不動産所得がマイナス300万円で、事業所得で500万円の利益を得ている場合、所得の500万円から損失の300万円を引いた200万円が課税対象になります。

しかし、家族信託の財産内で発生した不動産の損益と他の所得を損益通算できません。これは租税特別措置法の41条4の2において、信託財産である不動産から発生した損失は所得税の規定において生じなかったものとみなすと定められているからです。

家族信託を利用した損益通算による節税はできないので気をつけましょう。

実務経験のある専門家が少ない

家族信託では実際に信託の終了まで対応したことがある専門家は多くはありません。なぜなら、家族信託は2007年の9月に施行された信託法によって生まれた制度であるからです。

誕生してから20年も経過していないので、実務経験が豊富な専門家を探すのは非常に難しくなります。相談する専門家によっては、適切なアドバイスを受けられない可能性があります。

実務経験の少なさから専門家の意見が必ずしも正しいとは限らないので、複数の専門家に相談して信頼できる相談相手を見つけることが重要です。

家族信託はメリットとデメリットを把握して利用する

家族信託は財産管理と遺言の機能を備えており、上手く利用すれば相続をスムーズに勧められるメリットの大きい制度です。しかし、家族信託にはいくつかのデメリットも存在するので、メリットとデメリットを理解した上で利用するようにしましょう。

また、家族信託は家族で契約を取り決める必要があるので、家族間でよく話し合うことも大切です。認知症になり判断能力が落ちてからでは家族信託を結ぶことはできないので、事前の対策方法の候補として知っておきましょう。

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