行動ファイナンスと金融経済学(モダンポートフォリオ)とは

(画像=ADragan/Shutterstock.com)

投資をする人なら、行動ファイナンスという言葉を一度くらいは聞いたことがあるかもしれません。

行動ファイナンスは学際的な行動経済学の一分野で、経済学・社会学・社会心理学・金融経済学(モダンポートフォリオ(Modern Portfolio Theory以降MPTとします))・心理学などが重なりあった理論です。

行動ファイナンスと最も関係が深い金融経済学(MPT)は、金融資産の投資比率(ポートフォリオ)を決定する理論です。その他の経済学の諸分野と比較して、以下のような特徴があります。

・歴史が浅い(本格的には1950年代以降 アメリカで発展)
・したがって客観的データが入手しやすい
・理論的仮説を実証することが可能、また反証もできる
・実際の金融ビジネスに応用可能

まず、金融資産のポートフォリオを組み立てるための基礎となる金融経済学のMPTの概要と、金融市場に対峙する時の投資家の行動(行動ファイナンス)について見ていきましょう。

MPTの定義

アメリカの経済学者であるハリー・マックス・マーコウィッツ博士(ノーベル経済学賞受賞者)が提唱したモダンポートフォリオ理論を一言で表すと、「最適ポートフォリオは投資家の効用を最大にする投資機会集合である」です。

しかし、これでは一体何のことかわからないと思います。もう少し噛み砕いてわかりやすい言葉に置き換えると、

最適ポートフォリオ=良い金融商品
投資家の効用=お客様の満足度
投資機会集合=金融商品

となり、わかりやすく再定義すると「良い金融商品とは、お客様の満足度を最大にする金融商品である」ということです。

これは、一般企業にも用いられている顧客満足度(Customer Satisfaction)そのものなのです。

MPTの前提に対する疑問

MPTが教える投資リスクに対処する基本的手段は、以下の3つです。

散らす(分散投資)
薄める(安全資産を部分的に混ぜる)
消す(保険(ヘッジ)をかける)

投資の合言葉のように使われている「長期」「積立」「分散」と対比してみると、「散らす」は「長期」と「積立」によって時間分散を図り、「薄める」は投資対象を一つに集中するのではなく複数のものに分散し、「消す」は組み入れる資産の中に逆相関の商品である金やコモディティなどの商品を入れたり、保険の役割を果たす「オプション」を入れたりする方法が考えられます。

ここで、「実際に投資家はMPTに定義されているようなモデル通りに行動するのか」という疑問が湧いてきます。

MPTは、「市場は情報に関して効率的だ」「投資家はみんな合理的に行動する」「制度的な摩擦はない」
といったことを前提に考えられています。

しかし現実の経済には、「市場は本当に情報に関して効率的か」「投資家は完全に合理的に行動しているか」といった疑問や「制度的な成約は実際に存在する」といった事実があるのです。

インターネットがこれだけ普及しても、プロの投資家と一般投資家が入手する情報の違いは明らかに存在しますし、投資家はときに感情的・直感的に売買を行うケースが少なくないことは、皆さんも聞いた経験があるかもしれません。

モダンポートフォリオと行動ファイナンスのギャップ

標準的なMPTが前提とする仮想世界と行動ファイナンスが観察した現実世界を比較してみると、以下のようなギャップが存在します。

MPTの仮想世界 行動ファイナンスの現実世界
市場は情報に関して効率的
どんな公開情報も一瞬にして全員に行き渡る
情報はすべての投資家に行き渡らない
情報の非対称性がある。さらにテクノロジーの進化によって、情報を持つ者と持たない者の格差が広がる
投資家は合理的に行動する 投資家は限定合理的
 数字ではなく感情や直感で動く
お金の効用を最大化
リスク・リターンを合理的に考える
お金以外にも効用を求める
 自己表現欲求、情緒的欲求
制度的摩擦はない
 取引コストは0
 税金もない
 貸付と借入が同じ利子率
 空売り自由
制度的な差はある
 金融機関に取引コスト支払う
 税金あり・NISA iDeCo といった非課
 税口座あり
 負債・費用あり
 空売りができないこともある

皆さんが投資をするとき、以下のように思ったり、行動したりすることはないでしょうか。

・好きな商品やサービスを提供している特定の企業を応援したい
・お金は、生き金と死に金がある。自分にとって生き金と思える使い方をしたい。
・リスクを回避するというよりも、損をしたくない
・富を最大化するのはなく、投資して損をしたという後悔を最小化したい
・投資先は自分で決めるのではなく、最近の時流に乗ったもの、他人が投資するもの
・長期投資ではなく、損が出たらすぐに損切りしてしまう(近視眼的)

これらは、投資家が取る行動のほんの一例です。これらは、現代の行動ファイナンスでは当然の行動として考えられています。

近年、お金に関する考え方が少しずつ変化してきています。今まではお金に経済的価値しか見出さず、いかに多く所有するかが重視されていましたが、お金は今後人間の感情が入るものに変化していくでしょう。クラウドファンディングやソーシャルファンディングなどは、その一例です。そうなると、ますますMPTでは説明しきれない金融マーケットへと変化していくのではないでしょうか。

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