3つのデータで分析!コロナ禍の東京23区における賃貸マーケットの変化

(画像=zephyr_p/stock.adobe.com)

コロナ禍において東京都では転出超過が止まらず、賃貸需要が下火になることを懸念する不動産投資家も少なくないでしょう。

テレワークの普及によって都心部のオフィスでは空室率が7年ぶりの高水準となっており、職住近接のニーズに支えられてきた都心部の賃貸住宅への需要にも大きな変化が起きるかもしれません。

本記事では、人口推移・家賃相場・空室率という3つのデータを用いて、コロナ禍で東京23区の賃貸マーケットにどのような変化があったのかを分析していきます。

3つのデータで分析!コロナ禍の東京23区における賃貸マーケットの変化

人口推移・家賃相場・空室率という3つのデータから、コロナ禍の東京23区における賃貸マーケットでは、以下のような変化が起こっているといえます。

・23区中17区で人口が減少(2021年)
・家賃相場は上げ渋りながらも微増
・空室率は概ね横ばいで安定推移

2021年9月の時点では、23区の賃貸マーケットが根本的に覆るレベルの大きな変化やリスクの顕在化はみられていませんが、それらの発端となり得る変化が起こりつつあるともいえます。

コロナ禍における23区の賃貸マーケットの状況を今後も注視していく必要がありそうです。

23区中17区で人口が減少(2021年)

東京都人口統計課の発表によれば、2021年1月から8月において東京23区の人口総数は0.16%減少(9,732,290人→9,716,517人)しました。

コロナ前の4年間(2015年〜2019年)における23区の人口総数の年間平均変動率が1.13%の増加であり、同期間における各月の前年同月比が60ヶ月間で一度もマイナスになっていないことを考えると、23区の人口総数が減少するというのは注目すべきポイントといえるでしょう。

23区各区の2021年およびコロナ前における人口推移は以下の表の通りです(2021年における変動率が高い順)。

変動率(2021年1〜8月) 年間平均変動率(2015〜2019年)
中央区 0.54% 4.25% 3.71%
墨田区 0.21% 1.33% 1.12%
江東区 0.14% 1.22% 1.08%
台東区 0.08% 1.66% 1.58%
文京区 0.05% 2.02% 1.97%
練馬区 0.04% 0.86% 0.82%
足立区 -0.02% 0.68% 0.70%
荒川区 -0.06% 0.79% 0.85%
千代田区 -0.06% 3.34% 3.40%
世田谷区 -0.14% 1.03% 1.17%
杉並区 -0.14% 1.16% 1.30%
板橋区 -0.19% 1.10% 1.29%
渋谷区 -0.19% 1.89% 2.08%
中野区 -0.19% 1.37% 1.56%
葛飾区 -0.22% 0.62% 0.84%
大田区 -0.22% 0.96% 1.18%
北区 -0.30% 1.01% 1.31%
品川区 -0.33% 1.84% 2.17%
港区 -0.35% 2.12% 2.47%
目黒区 -0.39% 0.87% 1.26%
江戸川区 -0.45% 0.72% 1.17%
豊島区 -0.50% 1.16% 1.66%
新宿区 -0.61% 1.44% 2.05%
全区 -0.16% 1.17% 1.33%

※東京都人口統計課のデータより

コロナ前は23区全区において年間平均変動率がプラスであるのに対し、2021年は中央区、墨田区、江東区、台東区、文京区、練馬区の6区以外の17区において、人口が減少に転じました。

さらに分析を進めると、23区におけるコロナ禍の人口減少によるインパクトは、都心の区ほど大きかったということも読み取ることができます。

コロナ前と2021年の変動率の差(上掲表の「差」の項目)で比較をすると、都心6区と呼ばれる区(中央区、千代田区、港区、渋谷区、新宿区、文京区)が全て上位に入っているためです(以下の表参照)。

中央区 3.71%
千代田区 3.40%
港区 2.47%
品川区 2.17%
渋谷区 2.08%
新宿区 2.05%
文京区 1.97%
豊島区 1.66%
台東区 1.58%
中野区 1.56%
北区 1.31%
杉並区 1.30%
板橋区 1.29%
目黒区 1.26%
大田区 1.18%
世田谷区 1.17%
江戸川区 1.17%
墨田区 1.13%
江東区 1.08%
荒川区 0.85%
葛飾区 0.84%
練馬区 0.82%
足立区 0.70%
全区 1.34%

※上掲の表を「差」の項目で降順に並べ替え

テレワークの普及によって都心部に通勤する必要がなくなり、家賃の高い都心部から転出する動きや、人が集まりやすい都心部での居住を避ける動きに起因する結果といえるかもしれません。

2021年に人口が減少したいずれの区においても減少率は1%未満であることから、短期間で人口が急減したとまではいえませんが、増加続きだった23区の人口のトレンドが変わった可能性があるということは認識しておきましょう。

不動産投資家として、コロナ後の賃貸マーケットを見据え、23区の人口のトレンドを引き続き注視しておく必要があるといえそうです。

家賃相場は上げ渋りながらも微増

株式会社東京カンテイの発表によれば、2015年から2021年までの期間で23区の分譲マンション家賃(1㎡あたりの単価)は以下のグラフのように推移しています。

※株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」より

上掲グラフのように、2015年から2020年までは右肩上がりの上昇が続いていました(上掲グラフ青矢印)が、2021年は上昇が鈍化していることが分かります(上掲グラフ赤矢印)。

コロナ禍(2020年〜2021年)における推移では、3,700円台から3,800円台まで上昇しているため、同期間では上げ渋りながらも微増しているといえるでしょう。

本データを東京カンテイは「各築年帯での動きを見ても、賃料水準が高い築浅物件を中心に上値が重い推移を示している」と分析していることから、人気が高く強気の家賃設定ができる23区内の築浅物件において、家賃の上昇に鈍化傾向が強く見られるということが考えられます。

23区における人口の微減に伴って賃貸需要が例年より微減し、築浅物件を中心に強気の家賃設定ができなくなったということがコロナ禍における家賃上昇の停滞の一因といえそうです。

空室率は概ね横ばいで安定推移

株式会社タスの発表によれば、2019年以降の首都圏における空室率は以下のグラフのように推移しています。

※株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2021年7月」より

2019年以降の23区における空室率は、コロナ禍以降もコロナ前と同じ水準(13ポイント)付近を推移しており、首都圏での最低水準を維持していることが読み取れます。

23区における空室率のデータをさらに深堀してみましょう。

集計期間を2016年までさかのぼり、アパート系(木造、軽量鉄骨)およびマンション系(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造)という物件種別ごとの空室率の推移は以下の通りです。

・アパート系(木造、軽量鉄骨造)

※株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2021年7月」より

アパート系物件のコロナ禍以降における23区の空室率は、2021年に入って2ポイント程度微増(30→32)しているものの、コロナ前の水準を下回る値で推移していることが読み取れます。

コロナ禍においても23区のアパート系物件への賃貸需要は下火になっていないと評価することができそうです。

一方で、空室率の値そのものは30ポイント台(約3戸に1戸が空室)とやや高めであるため、木造または軽量鉄骨造のアパートに投資をするにあたっては、23区内であってもエリアおよび物件を厳選する必要があるでしょう。

・マンション系(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造)

※株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2021年7月」より

マンション系物件のコロナ禍以降における23区の空室率は、コロナ禍で1ポイント程度微増(11→12)し、2016年以降の最高値をつけました。

過去5年間での最高値をつけてはいるものの、以下2つの理由から23区における長期的な空室率の増加を過度に懸念する必要はないといえそうです。

・相対的に微増しているものの、空室率の値そのものは低い(11ポイント台)
・2021年以降は微減しており、コロナ前水準に戻りつつある

都心部においてもコロナワクチンの接種が進み、コロナ禍が終息に向かうに連れて23区の空室率はコロナ前水準に戻るというシナリオも大いに想定されるでしょう。

東京23区の不動産は今後も安定した投資先だが、エリア選定を慎重に

人口推移・家賃相場・空室率という3つのデータから評価するに、コロナ禍においても23区の賃貸マーケットは安定性を維持しているといえそうです。

一方で、コロナ禍が長期化することで23区からの人口転出が進み、家賃相場が下落し、空室率が上昇するというリスクシナリオを完全に否定することもできないため、23区の不動産投資においてはこれまで以上にエリア選定の重要性が高まるといえるでしょう。

不動産投資は入居者がいてはじめて完成する投資であるため、賃貸マーケットの情勢を随時チェックしながら、コロナ禍およびコロナ後の賃貸需要を見据えて投資活動をするのが得策です。

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