不動産投資を行うなら知っておくべき!改正民法による賃貸借契約の内容について

(画像=NateeMeepian/stock.adobe.com)

不動産投資を始めるにあたり、管理会社の選定が大切なポイントであることはよく知られているところですが、実際にオーナーである自分自身が賃貸借契約の内容を知っておくことも重要です。2020年4月1日から施行された「民法の一部を改正する法律」による賃貸借契約の改正点とはどのような内容なのでしょうか。

賃貸借契約とは?

不動産投資における賃貸借契約とは、賃貸人が物件の使用を賃借人にさせることを約束し、賃借人がこれに対してその賃料を支払うこと、そして引き渡しを受けた物件を契約終了時に返還することを約束する契約です。

例えばアパートの場合、賃貸人であるオーナーは、自己が所有しているアパートを居住目的のために貸し出し、そしてアパートを借りる賃借人はその対価として賃料を支払い、契約期間が終了した場合はアパートを退去して物件を返還するという約束になります。

これらは契約の当事者双方がそれぞれ対価的な義務を負う契約であることから、このような契約を双務契約といいます。

賃貸人の義務

賃貸借契約における賃貸人の義務として、「目的物修繕義務」と「費用償還義務」があります。

目的物修繕義務とは、「目的物の使用および収益に必要な修繕を行わなければならない」ということです。例えば、物件に備え付けのエアコンが故障した場合などであれば、賃貸人であるオーナー側に修繕する義務が発生します。

しかし、2017年5月に成立した民法改正により、「賃借人の責任で修繕が必要になった場合は、賃貸人であるオーナー側に修繕義務はない」ことが明記されました。したがって、賃借人が故意に建物の窓ガラスを割ったなどといった場合であれば、オーナー側には修繕義務は発生しないということになります。

そして費用償還義務とは、「賃貸借契約で目的物を使用および収益する際、賃借人自らが必要な費用を支出した場合、その費用を賃貸人が支払う義務がある」ということです。上で挙げた例のように、エアコンが故障した際に、直してほしいとオーナーに伝えたにもかかわらずなかなか直してくれないために、賃借人が自分でそのエアコンを直し、修理費用を支払った場合については、その費用をオーナーに請求することができます。これを償還請求といいます。

賃借人の義務

不動産の賃貸契約において、賃借人は、オーナーに対して賃料を支払う義務があります。そしてその支払い時期については、特約がなければ、原則として以下のとおりとなります。

  • 建物および宅地:当月分を毎月末
  • 宅地以外の土地:当年分を毎年末

賃借人は、賃貸借契約が終了した時にその物件を返還しなければなりません。これを「目的物返還義務」といいます。そして同時に、賃貸借契約により物件に入居した後に生じた損傷については、賃貸借契約が終了した際に元通りに回復させる原状回復義務を負います。ただし、明確な特約がない場合については、通常損耗(物件を通常に使用していたことにより生じた損耗)や経年劣化による損傷についてはその義務を負わないということになっています。

賃貸借契約におけるトラブルの対応

改正前の民法では、修繕や原状回復について明確なガイドラインが存在せず、トラブルに発生するケースが多く見られました。

賃貸借継続中のトラブル

例えば、改正前の民法では、「備え付けのエアコンが故障したため、賃借人がオーナーに何度も修理対応を依頼したものの、なかなか対応してくれない」といったケースや、「台風で屋根が損傷し、雨漏りがすることから、次の台風が接近していることもあり、早めに修理してほしい」といったケースにおいて、賃借人が自分で修理することができるのかどうかを定めた規定がありませんでした。

そこで今回の民法改正において、以下のような場合については賃借人が自分で修理を行うことができると明記されることになりました。

  1. 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、または賃貸人がその旨を知ったのにもかかわらず、相当の期間内に必要な修繕を行わないとき
  2. 急迫の事情があるとき

これにより、上記のケースにあたる場合には、賃借人が修繕を行ってもオーナーから許可なく修繕を行ったといって責任を追及されることは無くなりました。

賃貸借終了時のトラブル

賃貸借契約が終了した際には、上で述べたとおり賃借人には原状回復義務が発生します。そして、その範囲について、通常に使用していて発生した損耗や経年劣化などについてはその対象外となることとしています。しかし、改正前の民法においてはこのようなルールは明記されておらず、これについてもトラブルの原因となっていました。

改正後の民法では、賃借人は賃借物(物件)に入居した後に生じた損傷については、原状回復義務を負うが、通常損耗や経年劣化については原状回復義務を負わないことが明記されています。

この通常損耗や経年劣化にあたる例としては、法務省が発表している「賃貸借契約に関するルールの見直し」に以下のとおり紹介されています。

  • 家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
  • テレビや冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ
  • 地震によって破損したガラス
  • 鍵の取替え(破損や鍵の紛失を除く)

なお、引っ越し作業で生じたひっかき傷や日常の不適切な手入れ、たばこのヤニや臭い、メットによる柱などの傷や臭いなどは、通常損耗および経年劣化には当たらない例とされています。

賃貸借契約の存続期間と更新

従来の民法では賃貸借契約の存続期間を定める場合、最長20年としていましたが、改正により最長50年まで延期されることとなりました。ただし、50年を超えて定めた場合においては、その期間は50年となることに注意が必要です。

また、契約の満了により賃貸借契約は終了しますが、更新することが可能です。ただし、その際においても期間は50年以内としなければならないことになっています。

ここで注意しなければならないのは、借地および借家については借地借家法の存続期間の規定が優先して適用されることです。とはいえ、借地借家法が適用される賃貸借については、存続期間の「下限」が30年とされていることから、民法改正の影響はほとんどないといえるでしょう。

借地借家法とは?

借地借家法とは、民法の特別法として1992年に施行された法律で、民法よりも優先して適用されます。そして、この借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権と土地の賃借権である「借地権」の保護と、建物の賃貸借である「借家権」の保護を主な目的として、さまざまな規定がなされています。

借地権を設定する際の存続期間については、普通借地権の場合は30年以上でなければならないとされ、期間を30年未満と定めた場合や期間について定めなかった場合については30年となります。

改正前の民法では、賃貸借期間が長期に渡る場合、物件の損傷や劣化が顧みられないという懸念から、期間の上限を20年と定めていましたが、賃借人を保護する観点から、民法の特別法である借地借家法による修正が加えられ、さらに今回の改正によってより長期の存続期間が認められることとなりました。

改正民法の適用時期

賃貸借や保証に関する契約については、原則として施行日(2020年4月1日)よりも前に締結された契約であれば、改正前の民法の内容が適用されます。そして、施行日後に締結された契約については、改正後の民法の内容が適用されます。また、施行日後に当事者同士の合意によって契約の更新がなされた際には、その更新日から改正後の民法の内容が適用されることとなります。

契約の時期や締結時期によって、今後しばらくは旧民法の内容と改正後の民法の内容が混合することとなります。賃貸人および賃借人それぞれの義務の内容がどのように変化したのか、そしてその適用開始がいつになるのかについては、管理会社も含め、オーナーである賃借人がきちんと理解しておく必要があるといえるでしょう。

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