不動産投資で節税する仕組みとは?所得税と相続税に注目しよう

(写真=Grand Warszawski/Shutterstock.com)

「アパートを経営すると節税になる」という話を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。実際、バブル期には節税目的で多くの人がマンションやアパートの購入に踏み切ったと言われています。

しかし、不動産投資に際しては単に「節税になるらしい」という漠然とした話だけではなく、具体的に何をどうやれば節税につながるのか、情報を精査して把握しなければいけません。投じる金額が大きいため、事前の情報収集は正確かつ網羅的に進める必要があります。

特に、不動産投資では所得税や相続税の節税が中心になります。基本的なメカニズムや経費の種類などを覚えておきましょう。

不動産投資は節税目的でするべきではない

最初にお伝えしておきたいのは、不動産投資は節税目的で始める事業ではないということです。節税を最優先にして不動産投資を続けると、目的が本筋から外れてしまいがちになるためです。結果として、節税メリットよりも赤字幅の方が大きくなることもありえます。あくまで、節税ではなく安定的な利益を得ることを念頭に不動産投資を計画しましょう。

そもそも、不動産投資には大きく分けて三つのリターンがあります。安定的な家賃収入(インカムゲイン)、不動産の値上がりによる売却益(キャピタルゲイン)、そして節税によって残ったお金です。決して節税だけが不動産投資のメリットではありません。

三つのリターンのうち、最も重要なのは家賃収入です。長期的に利益を得られる家賃収入が、一時的な売却益やちょっとした節税よりも優先的にターゲットとすべきリターンだと言えます。もちろん売却益や節税にもうまみがあるのは確かですが、あくまでこの二つは副次的なものになります。

特に節税の場合、真剣に考慮する必要があるのは黒字になってからです。赤字の場合は、損益通算によって課税所得が減るわけですから、特別な工夫をしなくても自ずと節税になります。安定的な黒字があり、そこに節税の工夫をプラスすることで手取り分が増えるというわけです。節税ありきの不動産投資ではなく、家賃収入あっての節税と考えましょう。

不動産投資にかかる税金とは?

不動産投資に関わる主な税金として、消費税・所得税・住民税・不動産取得税・固定資産税(都市計画税含む)・相続税・贈与税などが挙げられます。

このうち、消費税や不動産取得税などは不動産の取得(購入)時に関わってきます。不動産の運営をしている間は所得税・住民税・固定資産税といった税金を支払う必要があります。また、父母や祖父母などから不動産を相続ないし贈与された場合は、相続税や贈与税の支払い義務が生じる可能性もあります。

税金以外にも、火災保険やローンの返済分、必要経費などが支払い対象となります。経費を増やして課税所得額を目減りさせ、税額を抑えるのが節税対策の基本です。

節税できるのは所得税・住民税と相続税・贈与税

不動産投資に関係する各種税金のうち、節税対象となりえるのは所得税・住民税および相続税・贈与税の4種類です。

そもそも節税できる税金は、所得額に応じて金額の変動するものと、相続・贈与の対象となる資産に関連するものに限られます。それ以外の税金は、個人の努力でどうにかできるものではありません。たとえば、固定資産税は所有する土地の評価額に応じて決定されるものであり、所得にかかわらず必ず支払わなければいけない税金です。

さらに、不動産を所有している本人に関係する節税対象は所得税と住民税の2つに限られます。前述の通り、相続税は資産を相続した人(相続人)の支払う税金であり、贈与税は資産を贈与された人の支払う税金です。あくまで、資産を所有している本人の税金ではないので注意が必要です。

ただし、不動産所有者にとって相続税や贈与税が全く関係ないわけでもありません。自分の好意で不動産を相続ないし贈与したのに、結果として相手が重い税金に苦しむようでは本意ではないはずです。

これらの税は不動産を相続ないし贈与された時点で対象になるため、支払う側が節税の工夫をできるわけではありません。あくまで、相続や贈与しようと思っている人が、相続や贈与の前に考えておく必要があります。

こうした理由より、節税対象として所得税・住民税と相続税・贈与税を考えていきます。

減価償却費で赤字を損益通算して所得税・住民税減税

所得税や住民税を節税する際にポイントとなるのが、いかに減価償却費を計上するかです。減価償却費を活用することで、実際のお金の動きが黒字であっても帳簿上は赤字にすることが可能となります。不動産所得が赤字であれば、他の給与所得や事業所得などと損益通算することで課税所得額を減らせることになります。

減価償却とは、ある資産にかかった費用を購入した年に一括して計上するのではなく、利用可能な年月の分だけ分割して毎年計上する仕組みのことです。この「利用可能な年月」は法律によって異なっています。

たとえば、建物であれば木造22年、軽量鉄骨(LS)造19年、鉄骨(S)造34年、鉄筋コンクリート(RC)造47年と決められており、これを「法定耐用年数」といいます。したがって、仮に鉄筋コンクリート造の建物を1億円で購入したとしても、47年間に分けて年間約210万円ずつ費用を計上することもできます。

もう一つのキーワードである損益通算とは、総合課税の対象となる所得同士を合算する仕組みです。たとえば、給与所得が1,000万円で不動産所得が200万円の赤字だった場合、課税対象となる所得額は800万円で済みます。ある所得の赤字を別の所得の黒字で相殺するのが損益通算です。

このように、減価償却と損益通算によって課税対象所得を帳簿上目減りさせることが、所得税および住民税の節税方法の柱となります。ちなみに、不動産を売却して得られる売却益は損益通算できないので注意しましょう。不動産売却益は税法上で譲渡所得にあたり、他の所得と分離して課税対象となるためです。

経費計上で課税対象となる所得を減らす

所得を減らすためには、経費の一部とされる減価償却費以外にも、経費を計上することになります。

不動産投資にとって経費となる費用は、人によって異なります。しかし、基本的には「不動産投資に関連する費用」であれば経費にできると考えられています。一般的に経費になりそうな費用は、以下の通りです。

・管理費
・賃貸管理代行手数料
・火災保険および地震保険料
・修繕積立金および修繕費
・減価償却費
・租税公課
・ローン返済額利息分
・その他不動産の運営に関連する費用(交通費・新聞書籍費・通信費など)

建物の清掃やエレベーター・各種設備の維持管理に使うお金は、すべて「管理費」として計上可能だと考えられます。管理作業の一部および全部を賃貸管理会社に委託している場合は、会社に支払う手数料も経費扱いとなります。

いざというときに備えた保険料や修繕積立金、実際の修繕時の修繕費も経費となります。入居者が退去した後の破損部分の修繕にも充てられます。

それ以外に、金融機関から受けた融資の返済額のうち利息分は経費となります。元本部分は経費にならないため注意しましょう。また、不動産売却益や自宅に関わる費用も経費にはできません。

青色申告の利用で控除額を増やす

経費によって利益を圧縮する以外に、青色申告によって控除額を増やすのも有効です。

不動産投資によって利益が出ると、確定申告で所得額を国に報告する義務が生じます。その方法として、大きく分けて簡単な白色申告と青色申告の2つがあります。複雑な青色申告は特別控除が認められており、複式簿記に基づく貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して期限内に提出していれば、最高65万円が控除となります。

節税効果を考えると、複雑で手間がかかるとしても青色申告を活用するのがおすすめです。手作業で記帳するのは大変ですが、今では個人向けにも会計ソフトが販売されているため、かなりの作業を自動化・効率化できるようになっています。こうしたソフトも使えば、それほど知識を持っていなくても青色申告のハードルはそう高くないでしょう。

なお、青色申告をするためには青色申告承認申請手続書をあらかじめ税務署に提出する必要があります。何かしらの処分の通知がない限り承認されるはずなので、時間がかかっていたとしても気長に待ちましょう。

国税庁によれば、その年の12月31日(その年の11月1日以降新たに業務を開始した場合には、その年の翌年の2月15日)までに通知がなければ承認されたものとみなされるそうです。

預貯金を不動産に換えると相続税評価額が圧縮

不動産投資は、相続対策にも活用できます。たとえば、預貯金を不動産に換えてから相続すると、預貯金をそのまま相続した場合に比べて相続税の節税となる可能性が高くなります。

相続税の対象となる不動産の評価方法が現金と異なることが、この方法が節税となる理由です。土地は「路線価」をもとに評価され、建物は「固定資産税評価額」をもとに評価されます。このとき、路線価は実際の売買価格の8割程度、固定資産税評価額は実際の売買価格の7割程度となることが多いと言われています。

仮に現金1億円を5,000万円ずつに分け、土地と建物を購入したとします。土地の評価額は4,000万円程度(=5,000万円×0.8)、建物の固定資産税評価額は3,500万円程度(=5,000万円×0.7)となりますので、相続税の対象となる資産評価額は7,500万円になるわけです。

建物を賃貸用マンションとすると、さらに評価額の圧縮が期待できます。部屋を借りている人にも借家権や借地権が認められ、持ち主の権利が少なくなると考えられるためです。

このように、預貯金で不動産を購入してから相続すると、相続評価額が大幅に圧縮される可能性があります。子どもや孫に重い税金負担を背負わせないためにも、不動産を利用した相続対策を頭の片隅に入れておきましょう。

住宅取得等資金の贈与の特例で節税

不動産と関連する贈与税の節税方法として、「住宅取得等資金の贈与の特例」と呼ばれるものがあります。相続資産を現金から不動産に換えることで相続税の節税になるのと同様に、贈与資産を住宅購入に使ってもらうことで非課税制度が適用されるのです。

現金をそのまま贈与すると、年間110万円以上の分は贈与税の対象となります(相続時精算課税制度なら合計2,500万円まで)。しかし、自宅用の住宅の購入・建設資金として贈与を受けると、それよりはるかに大きな金額が非課税となる恩恵を受けられます。具体的な非課税額については、国税庁のホームページを参照してください。

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

なお、国の定めた省エネ基準に合致する住宅を購入・建設すると、非課税枠がさらに大きくなります。ただし、投資用の不動産にこの特例は適用されないので注意が必要です。あくまで自宅用の住宅に限られた特例である点が、ここまでお伝えしてきた方法とは異なります。

財産を不動産に換えるのはデメリットもある

相続対策のために現金を不動産に換える方法をお伝えしましたが、この対策方法にはデメリットが3つあります。流動性の低さ、災害リスク、物件トラブルです。

流動性とは、現金への交換のしやすさを示す尺度です。有価証券とは異なり、現金がほしいからといっても不動産をすぐに売却できるわけではありません。不動産会社に営業を依頼する必要がある場合もあり、買い手が必ず現れるという保証もありません。納税やその他支払いを考慮すると、財産の大部分を不動産にするような資産運用戦略にはリスクがあると言えます。

2点目の災害リスクとは、地震や火災などによる損害・倒壊で莫大な修繕費用がかかったり、評価額が大幅に目減りしてしまったりするリスクを指しています。周知の通り、日本は災害国です。所有する不動産が災害に襲われるリスクは、常に頭の中に入れておく必要があります。保険への加入はもちろん、災害リスクの少ない物件を選ぶことも重要です。

最後の物件トラブルとは、入居率の低下や修繕費の増加に伴う金銭的な負担の増加のことです。節税のために不動産を手に入れても、費用負担が増えては意味がありません。また、評価額の低下によって売却価格が大幅に低下するリスクもあります。

このように預貯金を不動産に換える場合には、流動性・災害・物件トラブルの3つに注意して検討する必要があります。最初に述べたとおり、不動産の購入・運営による節税メリットは副次的なものに過ぎないため、節税だけを目的にして不動産投資に手を出すべきではないと言えるでしょう。

不動産投資のメリット・デメリットや物件の選び方、節税方法などについては不動産会社や税理士など、専門家に相談するのが良いでしょう。個別のケースによって考え方が異なる場合も少なくないので、一人で合点せず他人と話し合うのがおすすめです。

>>【参考記事】相続税対策は、いくらあるならやるべき?何歳から始めるべき?

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