年金改正法によって確定拠出年金の制度が変わる!?今後の改正スケジュールと受給の際のポイントとは?

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確定拠出年金の制度は、新たな公的年金の上乗せとして利用されるもので、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があります。個人型確定拠出年金については、加入可能範囲が国民年金第3号被保険者や厚生年金被保険者、さらに公務員にまで拡大したこともあり、2021年10月時点の加入者数は約221万人と、年々増え続けています。今回はこの確定拠出年金制度における今後の改正内容について、適用開始時期と合わせて再確認するとともに、給付金受給の際の注意点についても解説します。

確定拠出年金の改正項目

確定拠出年金の制度内容については2020年5月に成立した年金制度改正法による改正点がいくつかあり、その多くが2022年より適用が開始されます。ここでは施行スケジュールに合わせて改正の内容について紹介します。

受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日施行)

企業型確定拠出年金および個人型確定拠出年金ともに、2022年4月1日以降は60歳(もしくは加入資格喪失後)から75歳までの間で受け取りを開始することが可能となります(現行制度は60歳から70歳までの間)。ただし、確定拠出年金の加入資格を喪失した後、老齢給付金受給開始までは運用の指図のみを行うことになります。したがって、運用成果によって受け取る老齢給付金の額が変動する可能性があることや、事務委託先の金融機関に対する手数料が発生する点には注意が必要です。

加入できる年齢の拡大(2022年5月1日施行)

確定拠出年金の制度は企業型、個人型ともに加入できる年齢の上限が決められていますが、高齢者の就労の拡大を踏まえ、加入可能年齢が引き上げられることとなりました。

現行の制度において、個人型確定拠出年金に加入できる上限年齢は60歳未満となっています。しかし、改正により、国民年金被保険者であれば60歳以降でも加入できることとなり、加入可能年齢は65歳未満に引き上げられます。通常、国民年金の被保険者期間は60歳未満ですが、任意加入制度の利用者は60歳以上でも国民年金の被保険者となるため、個人型確定拠出年金に加入できます。

厚生年金被保険者や公務員で、勤務先に企業型確定拠出年金制度が用意されていない場合は、個人型確定拠出年金に加入することができます。また、会社の企業型確定拠出年金制度が個人型確定拠出年金との併用を規約で認めている場合も、個人型確定拠出年金へ加入できます。ちなみに厚生年金被保険者は国民年金第2号被保険者に該当するため、60歳以降も国民年金被保険者となることから、60歳以降も引き続き個人型確定拠出年金に加入できます。

現在、企業型確定拠出年金については、原則として60歳未満が加入可能年齢となっています。なお、60歳以降については、その企業の企業型確定拠出年金の規約で認められており、60歳前と同じ会社で引き続き働く場合においては最長65歳未満まで加入できます。今回の制度改正により、この要件が撤廃され、60歳以降であっても厚生年金被保険者であれば70歳未満まで企業型確定拠出年金に加入できることとなりました。ただし、企業によって加入できる上限の年齢は異なります。

加入できる要件の緩和(2022年10月1日施行)

現行の制度では、企業型確定拠出年金加入者のうち、個人型確定拠出年金に加入できるのは、労使合意に基づいた規約が定められており、あわせて事業主掛金の上限を引き下げた企業の従業員に限定されます。ただ、この制度はほとんど活用されていないといった現状を鑑み、規約の定めや事業主掛金の引き下げがなくても、原則として個人型確定拠出年金に加入することができることとなりました。ただし、企業型確定拠出年金の制度でマッチング拠出を行っている人は、改正後も個人型確定拠出年金に加入することはできない点に注意が必要です。

確定拠出年金を受給する際の注意点

確定拠出年金の老齢給付金を受け取る際には、所得控除が適用されるという税制優遇措置が用意されています。受給方法には「一時金(退職金)」と「分割(年金)」の2種類があり、両方を併用することもできます。そして、それぞれに対する税制優遇措置の内容は以下のとおりです。

税制上の取り扱い

「分割(年金)」で受給する場合は雑所得となり、公的年金等控除の対象となります。雑所得の金額は、以下の方法で算出します。

雑所得金額=年金の収入金額-公的年金等控除額

この年金の収入金額には、老齢基礎年金や老齢厚生年金はもちろん、確定拠出年金を年金形式で受給する場合の老齢給付金も含まれます。

一時金受け取りの場合は要注意

「一時金(退職金)」で受け取る場合は退職所得となり、退職所得控除の対象となります。確定拠出年金の退職金に対する退職所得控除額については、確定拠出年金制度への加入期間に応じて計算されます。ただし、一般的に勤続年数と確定拠出年金の加入期間に重複期間が発生するため、退職所得控除額が調整されます。その調整を行う計算方法の詳細は以下のとおりです。

【モデルケース】
25歳から60歳まで勤務(勤続年数35年)。退職金2,000万円
企業型確定拠出年金へは45歳から65歳まで(15年間)加入。確定拠出年金の一時金受取額600万円

(パターン1)
退職金と確定拠出年金の一時金を60歳で同時に受け取る場合

同時に受け取る場合は、勤続年数と確定拠出年金加入期間のどちらか長い方を用いて退職所得控除額を計算します。したがって退職所得金額は以下の額となります。
{(退職金2,000万円+一時金600万円)−退職所得控除額(800万円+70万円×(35年-20年))}×1/2=375万円(所得税額:32万9,270円)

(パターン2)
退職金を60歳で、確定拠出年金の一時金を61歳で受け取る場合

  • 60歳の時の退職所得金額={退職金2,000万円-退職所得控除額(800万円+70万円×(35年-20年))}×1/2=75万円(所得税額:3万8,270円)
  • 61歳の時の退職所得金額=(一時金600万円-退職所得控除額0円)×1/2=300万円(所得税額:20万6,750円)
    合計所得税額:24万5,020円

(パターン3)
退職金を60歳で、確定拠出年金の一時金を75歳で受け取る場合

  • 60歳の時の退職所得金額={退職金2,000万円-退職所得控除額(800万円+70万円×(35年-20年))}×1/2=75万円(所得税額:3万8,270円)
  • 75歳の時の退職所得金額={一時金600万円-退職所得控除額(40万円×15年)}×1/2=0円(所得税額:0円)
    合計所得税額:3万8,270円

パターン1のように退職金と確定拠出年金の一時金を同じ年に受け取ると、退職所得金額が大きくなり、その分税負担も増すことになります。したがって、パターン2や3のように受取時期をずらすことで最終的な税負担を少なくすることができます。特にパターン1とパターン3では所得税額に28万5,000円の差が生じている点は見逃せない部分ではないでしょうか。

退職所得控除の調整を上手に活用しよう

2種類以上の退職金を受け取る際には、その受取時期によって退職所得控除の計算の基となる勤続年数(確定拠出年金の場合加入期間)が異なることから、その調整を上手に活用することが大切です。
なお、退職所得控除額の調整が行われるのは、確定拠出年金の一時金を受け取る前の年以前14年内に退職金を受け取っている場合です。したがって、上記のパターン3のように退職金の受取時期と確定拠出年金の一時金の受取時期を15年以上空けることでさらに税負担を軽減することができます。今回の改正により、このような調整方法が可能となった点は注目すべきといえるでしょう。ただし、この方法を取る際には、受取期間を15年空けることによってリタイア後の家計の収支に影響がないかどうかをしっかりと考えて行う必要があります。

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