貰ったボーナスを返しなさい…グローバル企業で当たり前になりつつあるクローバックとは

(写真=Gearstd/Shutterstock.com)

もし、貰ったボーナスを没収されてしまったらどうしますか?きっと途方に暮れる人がほとんどでしょう。欧米のグローバル企業では、「クローバック条項」という取り決めにより、定款などで「巨額の損失や業績悪化が生じたらボーナスを遡及して返還する」と定められることがあります。この場合の対象は取締役であり、一般社員は対象外ですが、日本でもメガバンク・大手証券・ビール会社などで導入がすすんでいます。

2019年6月には、武田薬品の株主総会で、あわやクローバック条項の株主提案が可決されそうになったという事例もありました。ここでは、過去のミスを遡って追及されボーナス没収まで要求される「クローバック条項」と、条項可決の勢いを増しつつある日本市場の流れについて説明します。

リーマン・ショックが引き金となった「クローバック条項」

クローバック(clawback)条項とは、その名の通りお金を「取り戻す・回収する」制度です。クローバック条項では、経営判断の誤りにおいて損失が出た場合、既に支払った取締役への報酬(業績連動部分)を文字通り没収し、トップの責任で会社が被った損失を回収します。

トップによる経営判断(M&A・事業譲渡・新分野進出等)は、成否が出るまで何年というタイムラグが生じます。巨費を投じて買収した事業が数年たってからとん挫、巨額の減損を計上するようなケースも少なくありません。そこで過去にさかのぼって経営責任を問うのが、クローバック条項の目的です。条項を設けておけば、経営陣の不祥事が退任後に発覚するようなケースにも対処できます。

クローバック条項は、欧米では、リーマン・ショックを機に条項が広まりました。リーマン・ショックでは、投資銀行の多くが巨額の損失を計上したにもかかわらず、高額報酬を得ていたトップが責任をとらず問題視されました。ちなみにイギリスでは、条項を導入しない企業はその理由を説明しなければいけません。

日本でも導入が進む中、6月には武田薬品の株主総会でクローバック条項が株主提案され話題となりましたが、条項の導入には2/3の賛成が必要なため、否決されました。ただし機関投資家を含めた過半数が賛成票を投じた上に、ISSといった助言機関も賛同を呼びかけたことでもはっきりしたように、取締役の経営責任明確化を求める投資家の声は強まっているのです。

実際に返却されることもある

「伝家の宝刀」も、抜かれなければただのこけおどしに過ぎません。では、クローバック条項は発動されたことがあるのでしょうか。
欧米のグローバル企業は、経営層を対象とした報酬について業績連動のウエイトを増やしてきました。こうした中で経営層の報酬は増え続け、米CEOランキング50位でも20万ドルを超える水準です。

ウェルズ・ファーゴ(本店:カリフォルニア州サンフランシスコ)は総資産1,800億ドル超、もともとはリテールを中心としており、リーマン・ショックも乗り切った世界屈指の金融機関として知られていました。ウェルズ・ファーゴは、リーマン・ショックの時期にワコビアを買収して資産額を倍増、アメリカ4メガバンクの一角を占めるまで昇りつめます。

そんな絶頂期を迎えたウェルズ・ファーゴでしたが、後日待ち受けていたのは思わぬ不祥事でした。顧客に無断で開設していた架空口座や発行していたクレジットカードの常態化が発覚したのです。その数は数百万にも及ぶとされており、一連の事件で解雇された行員は5,300名に上ります。しかし、その背景には無理なノルマがあったともいわれており、事件の全容が明かされるにつれ、経営陣も厳しく責任を問われるようになりました。

同行の株価は10%下落したうえに米消費者保護局からは1.8億ドルもの罰金、さらにはカリフォルニアなど各州の取引から締め出されるなど、受けた代償は大き過ぎました。

事態の重大さを察知したジョン・スタンプCEOは自らクローバックの適用を銀行に申し出ることになったのです。

今後、日本でもクローバック条項を導入する企業も

欧米企業ではトップの暴走を防ぐために、クローバック条項などの防止策を導入しました。日本企業でも欧米にならって業績連動報酬が広まりつつあります。その中で、クローバック導入を求める投資家の声は今後ますます強まるとされています。

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