小規模会社をM&Aするときに使う株式評価の方法

(写真=crazystocker/Shutterstock.com)

中小企業の事業承継を活発にし、日本の産業を支える中小企業をいかに存続させるかについては、中小企業庁を先頭に様々な知恵を出しながら法整備が行われています。

その一つとして、M&Aを活用し事業承継を円滑にしていく方法があります。M&Aとは一言でいえば会社を買うことですが、その時に一番重要なのは会社の値段でしょう。

上場企業ならば、株式の評価額があるので比較的簡単に算定できます。では中小企業のような未上場の会社の値段は、どのように決められるのでしょうか。

一般的に会社の値付けは「企業価値評価」や「バリュエーション」と呼ばれ、その評価方法は大きく分けて3つの方法があります。また、複数の方法を組み合わせて使うケースもあります。以下でその方法を見ていきましょう。

コストアプローチ

企業の決算で作成される財務諸表の中で、決算期末日の企業の財産価値を表す貸借対照表(以下B/S)の純資産に着目し、価値を評価する方法を「コストアプローチ」と呼びます。コストアプローチという呼称から損益計算書(以下P/L)を使う方法と思いがちですが、B/Sの純資産の部を使います。

その方法はさらに2つに分類され、B/Sの資産と負債の差額である純資産額資本金、資本準備金、当期繰越利益などの合計を発行済株式総数で割った一株当たり純資産を使うものを「簿価純資産法」といいます。

もう一つは、B/S上の資産・負債を時価に置き換えて計算した純資産を使う方法で「時価純資産法」といいます。これは、今会社が解散したら手元にいくら残るのかを計算する方法でもあります。

しかし、実務上すべての資産・負債を時価に置き換えるのは無理がありますので、土地や建物、保有有価証券など時価の分かるものだけを使ってB/Sを修正し直す「修正簿価純資産法」もあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、M&Aの対象となる企業と同規模、同業種の株価や取引事例を参考にし、企業価値を算出する方法です。「類似上場会社比較法」がその代表的な方法で、文字通り同業種で企業の規模が同程度の企業価値を基礎に、一株当たり利益や純資産などの一定の係数をかけて企業価値を算出します。

インカムアプローチ

M&Aの対象となる会社が生むであろう将来の利益あるいはキャッシュフローに着目し、企業価値を算出する方法を「インカムアプローチ」といいます。

その方法はさらに2つに分類され、企業が将来生み出すと予想されるフリーキャッシュフローを現在価値(Present Value)に置き換えて株式価値を計算する「フリーキャッシュフロー法」と、会社が将来生むであろう純利益を現在価値に置き換えて株式価値を計算する「収益還元法」があります。ともに現在価値に置き換えることから、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)とも呼ばれています。

実務上の問題点

このように教科書的に企業価値を計算する方法はありますが、実際のM&Aの現場、特に売上が数億円程度のの中小企業についてどのような方法で計算するのでしょうか。

作成されている財務諸表が必ずしも正しいともいえず、開示情報が少ない上に、必ずしも経営者が会社の財務や業績のすべてを把握しているとは限りません。

特にインカムアプローチのような将来価値を予想する方法は、しっかりした経営基盤がある会社以外は「絵に描いた餅」になる可能性が大きいです。

中小企業でのM&Aは、言ってしまえば相対取引です。売り手側の経営者は少しでも高く売りたい、買い手側は当然安く買いたいと考えます。そこで売買を仲介するアドバイザーが、現実的な金額を提示していきます。一般的には前に述べた「時価純資産法」や「修正簿価純資産法」に「実質営業利益」の数倍が加算され、企業価値が算出されます。

ここまでお読みいただいた読者の中には、企業価値の算出方法に正解はないのでは、と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はその通りで、最終的には、売り手が提示した金額に対して、買い手側がどこまでリスクテイクできるかで価格が決まるのです。

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