マスターズでついに復活したタイガーをずっと支え続けたナイキブランドの度量

(画像=August_0802 / Shutterstock.com)

浮気・離婚・精神安定薬の服用とトラブル続きだったタイガー・ウッズが、ついに復活しました。トレードマークの赤シャツ姿でガッツポーズを決めるタイガーの姿は、ゴルフファンのみならず、多くの視聴者の目に焼き付いたことでしょう。

彼が身に付けていた真っ赤なシャツこそが、デビュー以来ずっとタイガーを支え続けてきたナイキの証しなのです。

ナイキは、他のスポンサーが次々と降りていく中でも、スタンスを変えませんでした。ナイキのその態度は、称賛の声を浴びています。

今回の記事では、タイガーのスポンサーを続けたナイキを軸に、スポーツブランドの戦略を考察します。

タイガーの勝利でスポンサー企業にも恩恵

18番ホールで60センチのウイニングパットを決めると、タイガーは両手でガッツポーズをとり、「We did it! (やったぜ)」と歓喜の雄叫びを上げました。

長い低迷に苦しんだタイガーが、ダスティン・ジョンソンやケプカらを辛くも1打差で振り切り、14年ぶり5度目のマスターズ優勝を果たした、「タイガー・イズ・バック」の瞬間でした。

タイガーが真っ先に抱き合ったのが、帯同キャディのジョー・ラカバでした。腰の故障でツアー復帰の目途すら立たない状況で、「他の選手のキャディバッグを担いでも構わない」と告げられてもタイガーのキャディーを勤め上げた人物です。

しかしタイガーの支援者は、ラカバだけではありません。

スキャンダルまみれでもスポンサーを降りなかったナイキ

2013年8月以来ツアー優勝から遠ざかっており、成績低迷に加えて不倫スキャンダルと離婚、鎮痛剤使用による警察沙汰などが響き、スポンサーだったプロクターアンドギャンブル(日用品)やAT&T(通信)、ジレット(日用品)、タグ・ホイヤー(時計)、ビュイック(自動車)など名だたる企業がタイガーの元を去っていきました。

しかし、1996年のプロ転向以来スポンサーを務めてきたナイキは、そんなスキャンダルまみれのタイガーを見捨てませんでした。

現在のプロスポーツ業界では、有名アスリートの多くが収入の多くをスポンサー企業に頼っています。生涯年収15億ドルと言われるタイガーも、その収入の大部分は企業とのスポンサー契約によるものです。

契約しているアスリートが活躍し続ければ、スポンサー企業にも大きなメリットがあります。アスリートの人気を広告宣伝や商品イメージに活用することをエンドースメントと呼びますが、タイガー優勝によるナイキのエンドースメント効果は26億円と言われています。

ナイキは、経済的利益のみを目的にタイガーを支え続けたのでしょうか。今や時価総額10兆円を超えるトップアパレル企業も、1960年代にフィル・ナイトが創業して以来、何度も存続の危機にさらされてきました。フィル・ナイトは、自らの歩みをタイガーと重ね合わせたのかもしれません。

驚異的な復活を称えた大統領自由勲章

5月6日、ホワイトハウスで「大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)」の授与式が開かれ、タイガーにその栄誉が授与されました。

トランプ大統領は、こんなツイートを残しています。「ゴルフや人生における成功と驚異的な復活を称え、ここに大統領自由勲章を授与する」

単に勝ち続けてきただけだとしたら、勲章授与には至らなかったかもしれません。どん底から這い上がってきた43歳の男が、復活を果たしたところに価値があるのでしょう。

「メジャー通算15勝の栄冠からどん底を経験した男が、3歳の頃と同じ夢を見続けているなんて驚異的だ」

これは、優勝後にナイキが配信した広告動画のメッセージです。

スランプから立ち直ることができず表舞台から去っていく、そんなアスリートは少なくありません。金銭的な損得だけでブランド戦略を考えるなら、落ち目になったプレーヤーを支え続けるのは無駄な投資です。

そんな企業の論理に逆行するナイキのスタンスは、アスリートやスポーツに対する企業スポンサーの在り方を世の中に問いかけているのかもしれません。

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