「お金と人生は似ている。行動を起こさないことが最大のリスク」–起業家・青木想さんがすべてのワーカーに伝えたいお金との賢い付き合い方とは

人生とお金は切り離して考えられないもの。お金だけでは幸福になれませんが、不幸を遠ざける強力な武器であることは確かです。貯蓄術や投資手法などを学び、しっかりと計画を立てることは、幸せな人生の第一歩といえるでしょう。そこで、お金との賢い付き合い方を学ぶべく、お話を伺ったのは、経営企画のスペシャリストであり、そのノウハウを個人のマネーデザインに応用したサービスを展開する株式会社Loveableの代表取締役社長・青木想さんです。

青木さんは、新卒でリクルートの経営企画セクションに配属、外資系保険会社に転職後は営業として活躍。現在は2人のお子さんを育てながら、社長としてキャリアを積まれています。3年前には離婚を経験。それを契機に、仕事やお金に対する価値観に変化が生じたそうです。青木さんのインタビューから、「働くとは何か」「資産形成は何からはじめればいいのか」などを考える上でのヒントを探ります。

数字から事業戦略を組み立てるプロセスに仕事の面白さを感じた

–青木さんは、株式会社リクルート(現リクルートマーケティングパートナーズ)に入社後、新卒では珍しい経営企画室への配属になったそうですが、本当は営業志望だったとか。なぜ、営業職に就きたいと思われたのでしょうか?

学生の頃から、「社会人になったら一番大変な仕事をしたい」と思っていたんです。泥臭いことをして、社会人としての基礎を身につけたいと考えていました。ですから、営業は会社の看板を背負って社外で仕事をするので、叩き上げられるはずだと。また、学生時代には、コールセンターや家庭教師派遣のアポ取り、試食販売など営業要素のある仕事をしており、もともと対面コミュニケーションが好きでした。営業は目標も明確で成果も見えるので、挑戦してみたかったんです。

–しかし、配属は真逆ともいえる経営企画室。思い描いていた社会人生活とはいかず、落ち込みませんでしたか?

落ち込むというか、はっきり言って挫折しましたね(笑)。普通、新卒は意気揚々としているものですが、私は「顔が死んでるよ」とよく言われました。仕事内容も、たとえばA3のエクセルシートに300行くらいの数字が並んでいて、それを分析して事業の状態を把握するというもの。希望していた営業とは逆をいくかのような仕事でした。私は高い目標を目指して頑張ることが大好きな、前のめりタイプなんです。明確な目標がない中で仕事をするのは辛かったですし、やったことのないことばかりな上に、経験もスキルも必要な仕事だったので、結果も見え辛く、モチベーションを維持することが大変でよく悩んでいました。

–仕事に慣れるにつれて、モチベーションに変化は生じましたか?

そうですね。9年間続ける中で、入社当時とは違う世界が見えるようになりました。たとえば、数字のモニタリング結果を報告して、それをもとに組織長や事業本部長が戦略を議論するのですが、数字をもとに事業のビジョンや戦略を見直して、徹底的に数値管理する過程で事業の業績がV字回復していく過程を目の当たりにしたんです。事業は数字を徹底的に分析して、PDCAをまわすと業績が本当に回復することを知りました。数字から業績改善の糸口を導き出すプロセスもとても勉強になりました。会社員をしながら経営視点の仕事ができたことは、いい経験になりました。

–リクルートは、9年目で退職されたとのことですが、きっかけがあったのでしょうか?

きっかけは、ズバリ離婚です。3年ほど前に夫と別れることになり、2人の子どもの親権を私が持つことになりました。価値観の違いからの離婚でしたので、話し合った上で養育費も受け取っていました。それでも、自分が世帯主として子どもを育てることになったとき、このままでいいのだろうかと不安がよぎりました。

–順調にキャリアを積まれていた中、なぜ不安を感じられたのですか?

リクルートには9年在籍していましたが、約3年は産休育休で、さらに在籍期間の半分以上は時短で働き、かつ経営企画の仕事しかしていなかったんです。しかもリクルートは人材輩出企業ですから、40歳すぎるとみんな転職したり起業しています。社外に人脈もなく、働く期間も短かった私が、果たして仕事を続けられるのだろうか、という漠然とした不安がありました。また、自分の生き方としても、「子どもたちのために会社を辞められない」「希望していない仕事にしがみつくしかない」という選択だけはしたくなかったんです。どうせなら、自分が楽しく働けて、ちゃんと稼げる仕事をしたいと思いました。

念願の営業デビュー。自分が心を開いたことでお客様との距離が近くなった

–それから、外資系保険会社に転職。営業として活躍され、1年目のルーキーに対する表彰で、全国1,378人中3位、女性営業として1位を獲得するなど、圧倒的な結果を残されています。ジョブチェンジで、仕事に対する意識は変わりましたか?

まず、これまでのキャリアで築いた自分の強みは何かを振り返りました。その結果、「戦略性」だと気づいたんです。それは営業にも通じることで、見込み客の開拓も戦略的に考えないといけません。そこについては自信がありました。また、営業は頑張っただけ給与に反映されますし、すべてはお客様からの評価に掛かっているので、モヤモヤすることもありません。
私のように子育てをしていて、時間に制約がある人間にとって、行動がしっかり結果に反映される仕事は理想的でした。社内での評価に左右されず、やればやるだけ収入も人脈も増える仕事は、私の性に合っていたんだと思います。

–仕事のどんなところにやりがいを感じられましたか?

保険の営業はとても好きでした。目の前のお客様が「青木さんと出会えてよかった」と仰ってくださることが嬉しくて、喜びを感じました。保険は家族を守る商品なので、自分がお客様の大事な家族を守っているような感覚もあり、常にやりがいを感じながら仕事に向き合うことができました。とはいえ、最初から上手くいったわけではありません。スタート時から、メンタルブロックを外して誰にでもオープンに営業できたかというと、そんなことはなく、「私、離婚しておりまして」とは言えなかったです。自分をさらけ出すのが怖く、2か月くらい思い悩みました。ただ、これではお客様との距離を縮められないと思ったんです。

–そう思われたのは、なぜでしょうか?

保険の営業は、ご自身のことやご家族にまつわる様々な話を伺います。とても大変な経験をしていらっしゃることに、驚くことも少なくありませんでした。そんな大事な話を伺う仕事なのに、私が心を開かなかったら、お客様も本心を打ち明けてくださらないだろうと気づいたんです。そこで、自分から「離婚していて娘が2人いるんです」とか、「こういう経緯で保険の営業をするようになったんです」と毎回自己紹介するようになりました。

–それによって、お客様との距離感は変わりましたか?

そうですね。「青木さん、すごいですね」って仰ってくださる方もいて、応援してくれる人が増えました。それは、私自身が「人からどう思われるかな」といった自意識や不要なプライドを捨てた結果、お客様と正面から向き合えたからだと思います。

–青木さんは、2人のお子さんを育てるワーキングマザーですが、プライベートとの両立はどのようにされていますか?

私はとても欲張りな人間なので、仕事の時間、家族との時間、プライベートの時間、どれかひとつでも欠けたら嫌なんです。なので、1日、1週間、1か月を自分にとって、ベストな割合にできるように時間を配分しています。最初から上手くはいきませんでしたが、いまはやるべき仕事、やらなくてもいい仕事を分類できるようになって、バランスを取れるようにしています。

–ストレスが溜まることはないですか?

もちろん、ストレスが全くないといことはありません。でもそういう時は、運動したり、心を許せる人や友達と一緒に過ごしたり、スケジュールとの兼ね合いを見ながら、自分へのご褒美を作ります。「今週はこのゴールを目指して頑張ろう」と思うようにしています。でもありがたいことに、今は本当に自分が好きな仕事をさせていただいているので、あまり仕事でストレスがたまることはないですね。それでも、自分の中でモヤモヤしたときには、自分と向かい合う時間を作ったり、気兼ねなく相談できる信頼できる人にすぐに連絡すようにしています。

一人ひとりの大事な人生をマネーデザインで支えた

–保険の営業を経て、2018年2月にベンチャー企業の経営支援や、個人向けのマネーデザインなどを手掛ける株式会社Loveableを立ち上げられました。マネーデザインとは、どのようなサービスでしょうか?

マネーデザインは、もともと保険の営業時代に感じていた”負”を解消したいと思い、はじめたサービスです。日本には、お金のことをフラットに相談できるところが少ないことに、疑問を感じていました。保険は保険会社、投資は投資会社と分けられていて、お金の不安が生じたとき、「誰に相談していいか分からない」と暗中模索状態になってしまいます。それを解決したいと思い、事業として立ち上げました。

–青木さんにとって、お金とはどのような存在でしょうか?

お金は手段に過ぎないと思っています。でも、皆さんがお金をちゃんと増やしたり、蓄えたいと思うときには、必ずそこに、その人の大切な人や大切な夢がある愛すべき人生があります。そんなかけがえのないその人の人生にマネーデザインを通して、少しでもお役に立てられたらといつも思いながら仕事をしています。

–どのような方がマネーデザインの相談に来られますか?

会社員の方が多いです。ご夫婦や30代以降の女性が相談にいらっしゃるケースが比較的多いです。とりわけ女性で仕事でも活躍されてらっしゃる方ですと、仕事が忙しいあまりに、お金の知識を得る機会がないまま過ごしてきてしまった方も多いです。そういう方は、せっかくお仕事で蓄えられてきた資産を、信頼して預けられるような人も周りにおらず、このままで大丈夫かとご自身の老後を不安に感じられている方もいらっしゃいます。そういう方からは、同じ働く女性として、仕事もお金のこともこれからも相談できる人でいてほしいとおっしゃっていただけることもあります。

–マネーデザインは、どのように行っているのでしょうか?

個別のご相談では、ライフプラン表を1年ごとに作成して、どういう生活をしたいか、老後はどんな人生を歩んでいきたいか、どれくらいお金がかかるかをきっちり計算します。ライフプラン表の作成は、会社の収支計画の作成と変わらないんです。事業計画を立てるノウハウを、そのまま個人の方にも活用させていただいているようなものです。

–どんな不安を抱えている方が多いですか?

特に、若い女性の方はいつまで自分が働き続けられるのだろうか、とか、結婚の有無にかかわらず、どれくらい貯蓄すればいいのかといった不安が多いです。お子さんがいらっしゃるご夫婦も、育児や老後の資金がどれくらい必要なのか、先が見えないことに対する漠然とした不安をお持ちです。

–青木さんのマネーデザインを通して、そうした不安はどのように解消されますか?

そうですね。マネーデザインの一番よいところは、数字で現状をちゃんと見える形にすることで、これからやるべきことや、将来に必要なお金がちゃんと明確になるところだと思っています。「毎月どれくらい貯蓄して、どのような資産運用をしたらこれくらい増えて、そうすれば老後資金はいくらくらい準備できるか」を数字にしっかり落とし込むことで、漠然とした不安が具体的なアクションプランに変わります。そうるすことで、お客様の不安が少しでも解消できればと思っています。

人生も投資も絶対的な正解はない。だからこそ行動してみることが大事


–資産形成に際しては、投資も有効な手段です。不動産投資や投資信託など、さまざまな種類がありますが、よく分からずに一歩踏み出せない人もいらっしゃるかと思います。

まずお伝えできることは、何もしないことが一番のリスクだということです。いつかやろうと思っているのなら、今日からやりましょう。一歩踏み出すにあたって、もちろん勉強は大事ですが、勉強だけでは、銀行の残高は増えません。また、投資においては、時間の分散も有効だとされているので、1年悩み続けたら、1年の運用期間を損していることになります。分からないからやらないではなくて、ぜひ自分が理解できる範囲で何か行動をしてほしいなと思います。

–会社員におすすめの資産運用方法は、どのようなものでしょうか?

毎月定額を積み立てる金融商品は、会社員の方には向いていると思います。つみたてNISAやiDeCoのように、毎月決めた額を積み立てられるものであれば、意識せずに資産を運用することができます。コツコツ貯めていくタイプの投資は長期の資産形成に適しているので、老後資金を貯めるための手段として有効だと思います。最近は、AIなどのテクノロジーを駆使したロボアドバイザーで、最適な商品を提案してくれるサービスも増えているので、活用してみるのもいいかもしれません。また、会社員は信用があるので住宅ローンを組みやすいと思います。信用も資産形成においては大きな武器になりますので、不動産投資もおすすめです。

–投資はお金と賢く付き合ううえで、有効な手段のひとつということですよね。

もちろん皆さん、お金で損したくないと思うんです。賢くお金を運用したいのは、誰しもが考えていること。でも、全員が賢く運用できていたら、世の中は大金持ちの人だらけですよね。だからこそ、頭でっかちに考え過ぎずに、まずは早いうちから挑戦してみることが大事だと思います。気になるけどよく分からないということであれば、詳しい人に聞いてみてほしいです。もちろんセミナーに参加してみてもいいでしょう。そのうえで、一番リスクが高くない方法はどれか、自分なりの答えを出してみていただきたいです。

–自分に合った投資方法を見つけることを、難しく感じてしまう人も多いのかもしれません。

なぜ、そう感じてしまうのか、突き詰めて考えると、おそらくお金を失くしてしまうのが怖いと感じているからだと思います。それであれば、失くしてもいいお金で投資すればよいと思います。これくらいだったら損してもいいかなと思える額で挑戦してみるということが大事です。賢くやろうと一歩踏み出せないのであれば、まずは損してもいいかと思える額で投資してみることをお勧めします。

自分に合った資産運用には、正解がありません。その意味では、人生とお金は似ています。これが絶対正しい生き方というのがないように、資産運用も絶対的な方法はありません。まずは、自分が気負わずにはじめられるところからスタートしてほしいなと思います。あくまでも、お金は手段だからこそ、自分や家族が毎日幸せでいられるために、まずは始めてみるという一歩を恐れずにいてほしいです。

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